【生活家電】ヘルスケア “シチズン コードレス温湿度計” 子機用│雨よけボックス工作②【DIY】

ヘルス家電『CITIZEN THM527 温湿度計』防雨ボックスの製作 その2   

 

前々回の『CITIZEN THM527 温湿度計』開封│レビュー のつづき part 2。

 

子機センサー(TR-THM527)を屋外設置するため、ABS製ウオルボックスをDIY改造した前回。

 

通気孔を4つも付ければ大丈夫だろうと臨んだテストで、ボックス(改)の外と中で差が出てしまった。

差と言っても数時間だけの観測だったので詳細はつかめていない。

 

なので今回は改めて『子機用屋外ボックス温湿度観測』をしてみる。

 

理想目標は子機THM527の精度と同じ「温度差±1℃未満、湿度差±5%未満」を目指す。

 

が、その前に・・・

 

 

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気象計収納箱のしくみ

そもそも今回の目的は「カンタンDIYで子機用防雨ボックスを作る」ことだった。

 

カンタン工作でもただ雨をしのげれば良いわけじゃない。

ボックス内にあっても、外気と同じ気温や湿度を測ってくれないと困る。

お手本にしたいのは本格的な気象計が収まるハウジングである。

 

真っ先に思いつくのはアメダスの気象筒。

アメダスより以前には百葉箱というハコモノもあった。

 

 

1  金属製のアメダス

アメダスは「気温・湿度・風向・風速など四要素観測をする気象観測システム」で筒形をしている。

 

アメダスの筐体は気象観測用の温湿度計などが入っていて、通風筒や金属製百葉箱とも呼ばれる。

ほとんどはステンレス製である。

©気象庁

※アメダスは日本全国に約840か所ある

 

日光の輻射熱を防ぐ目的で表面はピカピカ仕上げ。

外郭は空気層のある二重または三重構造。

内臓された電動ファンによって約3~7m/sで強制換気をし、中の空気を滞留させない仕組みになっている。

 

2  木製の百葉箱

百葉箱は「気温・湿度計や記録装置などの気象観測計が収納された箱」で小屋の様な形をしている。

 

今時の電気的計測システムになる前はこの百葉箱が主流で、温度計、湿度計、記録計(紙)などが収まっていた。

昔は全国ほとんどの小中学校の校庭にあったし、気象庁でもアメダスに切り替わるまで正式に使われていた。

(1993年3月頃)

 

百葉箱のほとんどは木製である。

©太平産業

 

日光を反射する目的で全体に真っ白な仕上げで、側面の鎧戸は複葉型(二重ルーバー)構造になっている。

ルーバー部の有効面積は、自然風を入れるため全体の表面積に対して約33~45%と大きくとられている。

※単葉型もある

 

3  構造の秘密

ここで注目したいのはステンレス製でも木製でも屋根や側壁が二重または三重構造になっているという点。

 

なぜ二重になっているのか?

 

それは外気と内部の間にあえて空気の層を設けるためである。

 

空気は熱伝導率がとても小さい。

小さいということは熱を伝えにくい、つまり断熱するということになる。

この性質を利用している。

 

  参考✐

空気の熱伝導率は 約0.024 〜 0.026W/(m·K)
木材の熱伝導率は 約0.12 W/(m·K)  ※百葉箱

ABS樹脂の熱伝導率は 約0.19 〜 0.36W/(m·K) ※ウオルボックス

ステンレス板の熱伝導率は 約15 〜 25W/(m·K) ※気象計通風筒

 

身近な例で言えば窓サッシの『ペアガラス』。

ガラス2枚の間に空気層(≒12mm)をつくることで断熱性を高めている。

通風筒や百葉箱の二重壁と同じ原理なのである。

 

 

4  ウオルボックス百葉箱

今回DIYしたウオルボックスは基本1枚の単板でできている。

なので空気層は存在しない。

 

ABS素材の板自体にも熱伝導性はある。

あるのだが厚みは2~3数ミリ程度、断熱層とまではいえない。

 

それよりも箱の中にある“空気の体積”の方が大問題。

空気が滞留してしまえば、防雨ボックスが保温ボックスになってしまうからである。

 

つまり対処すべきなのはこの箱中の空気層のかたまり、これをどう扱うかにかかっている。

 

温湿度計を収めるためのハウジング(容器)の構造や仕組みが判ってきたところで、せっかく作り始めたこの子機用ボックスをどうすればよいのか…を考えてゆく。

 

 

子機用ボックスの現状

改めてボックス内の温度変化を観察してみることにした。

 

温度も湿度も同じ数値を示す(ほぼ差異のない)2台の子機THM527を用意。

 

 

1  外気と箱内の違い

前回、防雨ボックス完成後の簡易テストではほんの一瞬、直射日光がウオルボックスに当たってしまった。

これが大きな失敗で、その後も尾を引くように子機2台に温度差が出てしまった。

 

今回は設置場所を変更。

1日中、日陰のままのなことを再確認した。

 

温湿度計:THM527 ×2台(同じ数値を示す2台)

設置場所:地面から高さ約1.8mの外壁。

観測環境:天気予報で気温差が約10℃以上予測された日を選択。

 

観測当日は、晴れのち薄曇り。

風は穏やかで1~9m/s未満だった。

 

      1時間ごとの気温と湿度

屋外 ボックス内 差
気温 ℃ 湿度 % 気温 ℃ 湿度 % 気温 ℃ 湿度 %
00:00 18.5 58 18.7 59 +0.2 +1
01:00 17.8 63 18.1 61 +0.3 -2
02:00 17.0 66 17.4 65 +0.4 -1
03:00 16.4 68 16.6 66 +0.2 -2
04:00 15.9 69 16.0 66 +0.1 -3
05:00 15.1 72 15.4 69 +0.3 -3
06:00 15.2 70 15.2 67 0.0 -3
07:00 15.3 70 15.1 69 -0.2 -1
08:00 16.8 62 16.3 68 -0.5 +6
09:00 18.5 53 18.0 60 -0.5 +7
10:00 20.3 47 19.8 56 -0.5 +9
11:00 22.0 44 21.6 54 -0.4 +10
12:00 23.7 37 23.4 49 -0.3 +12
13:00 25.3 29 25.0 44 -0.3 +15
14:00 26.6 26 26.6 46 0.0 +20
15:00 26.7 26 27.1 42 +0.4 +16
16:00 25.8 36 26.5 42 +0.7 +6
17:00 24.1 42 24.8 45 +0.7 +3
18:00 22.8 50 23.5 50 +0.7 0
19:00 22.3 52 22.7 54 +0.4 +2
20:00 21.5 56 21.9 58 +0.4 +2
21:00 21.6 52 21.8 55 +0.2 +3
22:00 21.2 54 21.5 55 +0.3 +1
23:00 20.8 56 21.0 56 +0.2 0

※「差」=ボックス内-屋外 で計算しプラスはボックス内の方が高いことを示す

 

 

 

 

2  温度と湿度の差

観測結果から判ること。

 

1.気温の差

午前中の8時〜13時頃はボックス内の方が温度が低い(最大-0.5℃)。

14時頃を境に夕方16時以降にはボックス内の方が高くなっている(最大+0.7℃)。

 

1)気温が上がる午前

朝から日中にかけて外気が温まってゆく際、外気の上昇スピードに対してボックス内の温度上昇がわずかに遅れている。

 

2)気温が下がる午後

夕方から夜にかけて外気が冷えてゆく際、日中に温められたボックス内の熱がゆっくりと放出されるため、外気温の低下スピードよりもボックス内の方が緩やかに下がっている。

 

空気そのものは熱容量が小さい。

つまり温まりやすく冷めやすい。

 

しかしABS製のウオルボックス(=空気より熱容量が大きい)があることで条件が変わり、空気がゆっくり温められその後はボックスが放熱を邪魔するため冷えにくい現象が起きる。

これがタイムラグとして発生した。

 

2.湿度の差

湿度については、特に日中(10時〜15時頃)に屋外の湿度が大きく下がる(20%台〜30%台)中で、ボックス内は40%〜50%台を維持したまま。

最大で20%も高い“湿度こもり”が記録された。

 

1)温度と湿度の反比例の法則

一般に、気温が上がると空気中の飽和水蒸気量が増えるため、同じ水分量でも相対湿度は下がる。

日中(10時〜15時頃)ボックス内の気温が外気より低めに推移したため、それだけでも相対湿度が高く計算される状態にあった。

 

2)換気の限界による「湿気の閉じ込め」

通気孔が4箇所あっても、微風状態ではボックス内の空気が完全に入れ替わるには不十分だtyたということだろう。

そのためボックス内の空間に湿気がこもりやすく、日中の乾燥した外気がスムーズに入り込めないことで、高い湿度が維持されてしまったと考えられる。

 

 

子機用ボックスの考察

1  熱平衡と時定数

1.熱平衡

温度計のことを調べてみると『熱平衡』という言葉がよく出てくる。

「温度が違うモノ同士が接するとき、熱が移動して最終的にほぼ同じ温度で落ち着くこと」をいう。

 

温度計に例えれば「気温が変化した時に気温とセンサー間にあった温度差が無くなって数値が安定する状態」のことになる。

 

子機に照らしてみると、

1)子機と周囲の温度に差がある ➡ 温度が高い方から低い方へ移動する。

2)子機が周囲の温度に馴染む(取説の言葉)➡ 熱が移動し続けることで差が縮まり熱平衡に近づく。

3)子機に正確な値が表示される ➡ 温度差が無くなると熱の移動もなくなって数字が落ち着く。

 

この熱平衡はABS製ウオルボックス内外でも起きる。

 

どういうことか。

 

温度計を裸のまま置いておけば温度計のセンサー内だけで熱平衡する。

しかしボックス内に入れてしまうと、

センサー↔ボックス内の空気➡その空気↔ボックスのABS板➡そのABS板↔外気

となり、裸の温度計が1段階だったのに比べ2段階も増えることになる。

 

この段階が増えることで熱抵抗が増え、ボックス内の温度計の反応が遅れてしまう理由である。

 

この場合の「反応の遅れ」の度合い(目安)を『時定数』という言葉で表す。

 

2.時定数

時定数とは応答時間のこと。

記号は「τ」(タウ)、単位は時間(時・分・秒)で言い換えれば速度のモノサシ。

 

1つ注意なのは「時定数における応答率」という難しい数字。

応答が100%なる時間ではなく「63.2%」という中途半端にも見える指標値から推定する数字らしい。

 

温度計は温度差があるほど反応も速くなるが、温度差が小さくなると(つまり100%に近づくと)その反応速度は鈍くなっていき、最後は微速になっていつまでもゴールしない性質をもつ。

グラフで言えば、63.2%あたりから反応量が激減しゆっくりとしか進まない。

そしていつまで待っても100%に達しない。

 

これでは時間がかかり過ぎて実用的じゃないということで、もしこのセンサーが最初の反応速度の勢いのまま追従したらいつ100%に届くか?を計算する・・

 

この100%を推測したものが時定数になるということ。

 

温度計の数式💡

y = A × (1 – e^(-t / τ))

  • y:その時の温度

  • A:最終的な温度/目標値(ゴール)

  • e:2.718(決まった数字)

  • t:経過時間

  • τ:時定数

なかなか難しい部分だが、例えるなら身近にあるデジタル体温計。

昔ながらの体温計はおよそ10分かかるところを今どきの電子体温計は、体温上昇の変化率のカーブから10分後(およそ100%値)を推測し、10秒~30秒で表示してくれる。

室内用デジタル温度計も、アルゴリズムの違いはあれど推測した温度を表示する方法は同じとのこと。

 

時定数という数値は数式上100%になることがない関数式によるもので、グラフ化すると直線ではなく曲線を描く。

この曲線的な数値変化率を利用して、最高付近の曲点(ここが63.2という応答率)を指標にして100%を推算する。

これが時定数(τ)になる。

 

メモ✐

時定数 (τ) = 熱抵抗 (R) × 熱容量 (C)   ※単位は秒(s)・分(m)・時(h)

熱抵抗(R) :熱の伝わり難さ。物質の種類や厚み、空気の流れの有無で決まる。

熱容量(C) :温まり難さ。温度を 1℃ 上げるのに必要な熱量で物質の重さと比熱で決まる。

 

このτ(タウ)値は小さいほど反応スピードが速いことを意味していている。

 

有名なポータブル気象計 Kestrelなどのτ値は30秒以内らしい。

 

装置 時定数
Kestrel weather meters 約10〜30秒
百葉箱+水銀温度計 約5〜10分
家庭用温度計 約2〜5分

 

2  THM527と熱平衡

さて、シチズンの温湿度計の子機THM527に戻って。

 

取説の一文には急激な温度変化があった場合、周囲環境になじんだ後(約75分後)正確な値が表示されます」

とある。

©CITIZEN

 

ここには75分という馴染むまでの時間がかかれている。

 

75分?

そんなにかかっていては温湿度計として役に立たないのでは?

 

と初めはちょっと疑ってしまったが、実際はそんなことはなくて、日常的な気温変化では5分以内にはほぼ正常温度を表示している。

(実際のTHM527の使用感)

 

THM527の親機も子機も、仕様書上の測定範囲は「−30.0℃~+60.0℃」となっている。

たぶんこの測定範囲ギリギリで使用する場面もあるだろうということで、限界からの急激な温度変化にあっても75分あればで温度数字が落ち着く、という安全値からの説明文と想われる。

 

3  THM527と気温変化

THM527の時定数は公表されてはいないが、一般的な家庭用温度計と同じ3分~5分あたり。

 

また通常、一日の気温変化量は8~11℃くらいと言われてる。

稀に(春に多いが)1日の高低差が25℃~30℃になることもある。

 

仮に30℃の気温差があったとしても、9~10時間をかけて最高温度になり、ピーク後はまた10時間以上をかけて最低に下がっていく。

1時間に起きる気温の変化量は30℃÷10時間=3℃/時と計算できる。

 

3℃/1時間はイコール 0.25℃/5分である。

時定数5分の能力があればそんな環境下であっても、余裕で5分以内に表示ができる、ということなのである。

 

4  ウオルボックスと熱平衡

これまでの話は、子機をそのまま(裸)で設置した場合のこと。

 

箱(ウオルボックス)などに収納してしまうと、条件はガラリと変わる。

 

密封されたボックス内は正に温室状態。

気温上昇で温められた温度の逃げ場はなく、さらに透明な扉から入る輻射熱と合わせて温度が上がりっぱなしになる。

 

指標 推算値
時定数 (τ) 約 14分 〜 20分(63.2%)
3倍の法則 (3τ) 約 42分 〜 60分(95%応答)
5倍の法則 (5τ) 約 70分 〜 100分(100%応答)

 

この数値から言えること。

 

もし外気温が1時間で1℃上昇する変化をしたら・・・

ボックス内の温度も上がるがそれは約20分遅れての上昇。20分のズレは、外気が25℃になった時にボックス内は24.7℃あたり(20分前の温度)になっていると推測される。

 

もし外気温が1時間で3℃上昇する変化をしたら・・・

外気の上昇速度が0.05℃/分なので、ボックス内は20分遅れの0.05℃×20分=1.0℃だけ低い温度を示し続ける。

 

5  ウオルボックスと通気ルーバー

そこで必要になるのが通気ルーバー。

開口部を設けることで、自然風によるボックス内の空気を入れ替えられる。

 

熱平衡までにかかる推定時間(時定数)を3通りで比較してみた。

 

①子機をそのまま屋外に置いたとき

②ウオルボックスに閉じ込めた場合

③通気ルーバー付きのウォルボックスに入れたとき

 

まず未来工業 ウオルボックス CWB-DMの内容積について。

 

外寸:193×117×90mm

内寸: 154×81×70mm(蓋の中央)=0.87L(870 ㎤)

材質:ABS樹脂製

屋根:ABS2mm(二重構造)

側板:ABS2mm(単板)
底板:ABS2mm リブ構造あり

背板:ABS2mm リブ構造あり
前扉:ABS樹脂 約3mm

 

部位 実厚 計算上の扱い
側板(左右) 2mm 2.0mm
背面(リブ少数) 2mm+リブ 2.4mm相当
底面(リブ少数) 2mm+リブ 2.4mm相当
屋根(二重) 2mm×2 実質4mm(確定)
扉(透明) 3mm 3mm

 

ABSの代表値:

項目 値
密度 1050 kg/m³
比熱 1300 J/kg·K
板厚 2 mm(本体)
扉 3 mm(透明)

 

 

未来工業の通気用ルーバー仕様は下記の通り。

型番 穴径 円換算 有効面積
WB-L27 φ27 約 5.7cm² 約2.3cm²
WB-L34 φ34 約 9.1cm² 約4.1cm²

※今回のCWB-DB+子機温湿度計においてWB-L34は取付不可なので参考値

 

通気ルーバーの設置個数でどんな効果が期待できるか、AI算出してみた。

ルーバーの数
開口の有無 扉開放 0個 2個 4個 6個 8個
合計質量 (g) 290 290 300 310 320 330
有効開口面積 (cm²) 124.7 0.0 4.6 9.2 13.8 18.4
風力0 (0.05m/s) │ τ(分) 75 980 505 375 285 225
風力1 (0.03m/s) │ τ(分) 55 780 420 310 240 185
風力2 (1.60m/s) │ τ(分) 15 360 215 98 68 49
風力3 (3.40m/s) │ τ(分) 8 260 155 70 49 36
風力4 (5.50m/s) │ τ(分) 6 200 118 53 37 27
風力5 (8.00m/s) │ τ(分) 4 145 88 39 27 20

※風力0における0.05m/sは完全無風でも起こりうる自然対流値

 

 

6  結論

前回のDIYボックス耕作では、通気ルーバーを4コ取り付けた。

しかし結果は観測のとおり、温度は+0.7℃だったが湿度にいたっては+20%(ポイント)の差が出た。

 

そこで上記の試算表を基に、通気ルーバーを計8コに倍増する改造することにした。

開口面積は2倍になり、計算上は時定数τ(分)も半減する。

 

さて、どうなるか。

 

 

つづく。

 

 

 

 

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