helpa『SOLAR IMPULSE』アンテナ│ピトー管│小改造
普通の航空機とはちょっと違う、特殊なカタチをしたソーラーインパルス。
長い主翼は62.4mもあり(後継機では72.3m)ほぼ全面にソーラーパネルが貼られ、推進モーターは4基も携えている。
アンテナか ピトー管か
もう1つ特徴的なのが、機首と翼 にある3本の長いアンテナ。
航空機には速度を測る『ピトー管』と呼ばれる先端がとがった計測器がついていることが多い。
このソーラーインパルスにも3本ついている。
形からピトー管だろうと思っていたのだが、関連記事には「アンテナ」と記されていることも。
3本ともピトー管なのか違うのか?素人には判らない。
もしかしたら「アンテナ兼ピトー管」なのかも知れないが、ここは「アンテナ」としておくことにする。
ピトー管 (pitot tube)= 航空機の機首や翼などにあり速度を測る計測器
※ピトーは発明者の名
ソーラーインパスル アンテナ外観
1 実機のアンテナ
機首の先端に1本、左右の翼に各1本ずつ、計3本ある。
折り畳み式または取り外し式になっている模様。
詳細不明だが、写真から推測すると機首の長さと同じくらい。
管径は10数センチに見える。
2 模型のアンテナ
helpaの模型には柔らかい素材(たぶんポリプロピレン?)で出来た黒いアンテナ部品が付属している。
3本が1セットになっていて、自分で切り離して取り付ける仕様。
直径は約 0.5mm、長さは約 14mm。
大雑把な推測だが、1/200スケールモデルのこの数字を単純に200倍すると、実機のアンテナは 径10cm×長さ280cm以上? ということになる。
安全上の理由か柔らかい素材になっているが、どうも精度が良くない。
アンテナ先端部には主軸より細くなっている部分があるが、この鋭く細い先端が成型できていないのだ。
おまけに、購入した中古品は付属パーツが1本欠損している・・・(ハズレ引いた)
気付いたのが遅くて後の祭り。
仕方ない。
キット付属パーツに代えて、このアンテナ部品を3本とも自分用意することにした。
アンテナの自作
1 汎用パーツの検討
1.quickboost製 ピトー管
まず検討したのが、既製品の流用。
『ソーラーインパルス』はたぶんプラモデルキットにはなっていない。
なので、社外パーツも存在しない。
そこで、航空機プラモデル用として販売されているモノから流用できないか考えた。
まずは『クイックブースト製』のピトー管を検討。
QB72534
太さ0.5mmに一番近いものは 1/72 L-29 Delfin用のピトー管。
先端がとても細く、形状的には一番理想に近い。だけど残念なことに主軸の長さが足りない。
QB48758
1/48 SAAB J-29用のピトー管。太さが0.7mmほどになる。
実機アンテナの根元はおそらく10数センチなので1/200スケール的にはOKかも知れない。
が、1/48になると先端の細さがなくなってしまう。 もっと鋭くあってほしい。
QB48769
1/48 Kfir C2C7用のピトー管。これは先端の形状がまるで違っていた。
実物を手にして観察しないと中々細部までは判らない。
2.真鍮製 ピトー管
次は『ファインモールド製』の AA-20 ピトー管。
これは製品としてなかなかよく出来ている。
金属製ならではの質感と極細な先端加工がとても精密。
しかしこれも、主軸部分の長さが足りない。 あと5mm長ければ…惜しい。
既製品からはなかなか見つからない中で次に思いついたのが、0.5mm径の線/棒状の素材からアンテナを切り出す自前案。
2 素材からの削り出しを検討
1.カーボンロッド
先ずは、C-FRP(カーボン製)の丸棒で呼称Φ0.5mmのモノ。
2.シャープペンシル芯
もう1つ、Φ0.5mmと聞いてすぐ思い浮かぶのがシャープペンシルの芯。
実機のアンテナはカーボン製らしい。
C-FRPロッドもシャープ芯もどちらもカーボンなので見ためも素材も当に適合かも?
0.5mmシャープ芯を翼に付けてみたらサイズぴったり!に装着できた。
しかし素材感は良くても、さらに0.2mm以下まで先端を細くしなければいけない、という大問題がある。
旋盤のような工具は持っていないので、イチ素材から削り込んで先端を細くする加工は手作業ではとうてい無理・・・。
3 素材の組み合わせを検討
シャープ芯はおいといて、DIYで自作するのなら、1つの素材から削り出すより、2つを組み合わせる方法が手っ取り早い。
例えば、太い根元は金属製パイプ、先端には針金を差し込む二段構造にする。
1.素材の確認
さっそく手頃な材料を調達。
左側(銀色) ⇒ ピアノ線 0.2mm径。
右側(金色) ⇒ 真鍮パイプ 0.5mm外径×0.18mm内径。
カタログ値はあくまで呼称なので、実際に現物の径を測ってみる。
真鍮パイプの方は外径約 0.48mm。
ピアノ線の方は外径約 0.18mm、奇しくも真鍮パイプの内径と同じである。
もし実際に0.20mmだったら削らなければならなかったが、0.18なら大した加工無しで真鍮パイプ差し込めそうである。
2.真鍮パイプの加工
実機のアンテナ形状は、根元と先端の異径部が “円錐台” になっている。
根本から先端まで1つの素材から削り出そうとするとこの段差加工はとても困難。
しかしパーツが別れていれば比較的簡単である。
真鍮は柔らかい金属なので曲がりやすい。また径も0.5mmなので手で保持するのが大変。
そこで真鍮パイプを“ピンバイス”という工具に挟んで持ちやすくしてから、先端を削った。
ピンバイス ⇒ TAMIYA クラフトツール No.112 精密ピンバイス
紙やすり ⇒ TAMIYA フィニッシングペーパーP800~1200番
3.真鍮パイプの切り出し
円錐台に仕上げた後、真鍮パイプを付属パーツと同じ長さ 13.5mmで切断。
ちなみに、真鍮パイプ等は柔らかくてもハサミやペンチで押し切ってはいけない。
すぐ管がつぶれてしまう。
①良く切れるカッターナイフの刃を当てる
②真鍮パイプをゆっくり転がしてパイプ外周に切り込み傷を作る
③何周も転がして傷を深くする
④肉厚の半分以上に進んだら軽く折るようにすると「ポキっ」とキレイに切れる
4.ピアノ線の挿入
出来上がった真鍮パイプに 0.2mm(実測0.18mm)ピアノ線を差し込んだ。
特に調節する必要なくすんなりと入れることができた。
5.3セット製作
同じ要領で、3本分のアンテナを作る。
ピアノ線の先端を丸め、17.5mmでカット。
アンテナ3セット分の完成。
写真⇩ 左がキット付属のパーツ、右がDIYのパーツ
※ 後にピアノ線だけ1.5mm短くして全長を16.0mmに修正。
ソーラーインパルス アンテナの取付
1 機首のアンテナ
まずは真ん中、胴体の先端から。
狙い通り、ぴったり収まった。
2 翼のアンテナ
主翼の左側。こちらも問題なく取り付け。
アンテナ3本とも取り付けた様子。
ディスプレイケースの選択
今回のアンテナ/ピトー管DIY作りは一応終了。
せっかくなので、完成した『Solar Impulse』を飾るためのケースを検討する。
TAMIYAやWAVE などから模型用のディスプレイケースが各サイズ売られている。
でも、翼長315mm×全高130mm(スタンド込)が収まるケースはなかなか無い。
そんな中、見つけたのは青島文化教材社の『W330ディスプレイケース』。
プラスチック製で内寸が W335×D145×H125mm 。
アクリル製よりは透明度や平滑度がやや劣るが、大きさは必要十分。
ケースの台座に置いてみると、ぎりぎりだが翼が収まった。
ただ置いただけでは、ちょっとした衝撃でケース内で動いてしまう。
そこで、ディスプレイベース(半球体)が動いてしまわないよう、下面に幅2mmの両面テープ固定しておくことにした。
展示してみた完成形がこちら。
機体の全長と全幅はクリアしているのだが、全高が130mmほどあるので、ケース天井にギリギリになってしまった。
できればもうちょっと背の高いケースが良いが、今はこれしかないので仕方ない。
あと、ケース天板の中央に成型ヘソ跡?みたいな凹凸があるのもマイナス点。
まとめ
翼も胴体も細長く華奢なイメージソーラーインパルスだが、ケースに収めれば安心。
あとはDIYで作った3本のアンテナの着色。
実機を忠実に再現するなら主軸部分は黒、中間部分(円錐台形)は白く塗らないといけない。
しかし他にも違ってる部分はある。
例えばプロペラは白だし、スピンナーはオレンジ色だったりするのに、
この模型は全部まっ黒。
細部まで気にするなら全部に手を加えなきゃいけなくなる。
ケースに収めただけでも結構満足しちゃったので、細部の色塗りはまぁいいか…
ということで妥協することにした。
おまけ パートナー企業について
メインパートナー
約80社ともいわれるパートナー企業の中でも、メインパートナーの数社は機体コクピット下や尾翼にエンブレムが描かれている。
主なメインパートナー(抜粋)
SOLVAY・・・ベルギーに本社を置く化学薬品のメーカー
Schindler・・・スイスに本社を置くエレベータ・エスカレータのメーカー
ABB・・・スイスに本社を置く電力機器・産業ロボットのメーカー
OMEGA ・・・スイスに本社を置く高級腕時計のメーカー(SWATCHグループ)
時期によってスポンサーが代わるのか、BAYER(製薬会社)やDeutsche Bank(ドイツ銀行)が入っていたりもする。
ちなみにエンブレムが入るような企業の出資額は各社 11~22億らしい。
ソーラーインパルス模型は何種類あるのか
この『Solar Impulse』模型には何種類かのバージョンがあり、その大きな違いは「一般販売品」と「サポート企業向け品」の違いである。
全部で何種類あるのかは分からないが、少なくとも機体は2種、ディスプレイスタンド(企業ロゴ)は5種類を確認している。
helpa(通常モデル)
SOLVAY
aLTRan
Scindler
OMEGA
・・・残念ながらまだ入手出来ていない。
噂には聞いているのでたぶんスポンサー向けに作られているはずである。
月やアポロ好き星人としてはぜひ揃えておきたいOMEGA社のロゴ入り台座。
いつか巡り合えればと捜索中📡