USB Type-C『マルチメータ TC66C』開封│レビュー
工作室に揃えつつある道具を紹介する第三十三回め。
今回はUSB端子用の『マルチメータ TC66C』。
SmartフォンやMobileバッテリーなどの充電で気になるのが充電器の性能。
USB端子を普通の電気マルチメータで計測するのはなかなか困難、という場面で便利なのが、USBに直接挿して計るUSB端子付きマルチメータ。
TC66C 特徴
Amazonなどで評価の良い”TC66C”というUSB用マルチメータを使ってみる。
ちなみ杭州RuiDengテクノロジー という中国メーカーの製品である。
1 特徴
- 0.96インチIPSカラーディスプレイ
- 電圧│電流│電力│インピーダンスなどを計測
- 入出力 USB Type-C 端子
- 順方向│逆方向の計測が可能
- 複数の充電プロトコルに対応
- 充電プロトコルトリガー機能
- micro-B経由でPC接続可能
- Bluetooth経由でスマートフォン表示
2 仕様
TC66C |
|
画面サイズ | 0.96インチ ISPディスプレイ |
解画面像度 | 160×80 |
電圧測定範囲 | 0~30.0000V (分解能 0.1mV) |
電圧測定精度 | ±0.05℃+20bit? (23℃時) |
電流測定範囲 | 0~5.00000A (分解能 0.1mA) |
電流測定精度 | ±0.1‰+30bit? (23℃時) |
電力測定範囲 | 0~150W |
入力電源電圧 | 3.5-24V |
インピーダンス範囲 | 1~9999.9Ω |
容量累積範囲 | 0~99999mA |
エネルギー蓄積範囲 | 0~99999mWh |
充電プロトコル識別 | QuickCharge 3.0│2.0
Apple 2.4A│2.1A│1A│0.5A Android DCP SAMSUNG PD 2.0 |
Bluetooth通信機能 | あり |
温度測定範囲 | 0~45℃│32~176℉ |
リフレッシュレート | 2Hz |
動作環境温度 | 0~45℃ |
自動画面オフ | 0~9分 |
外寸 | L49×W22×H8mm |
重量 | 8g |
TC66C 概観
1 開封
半透明のプラケースに入っている。
およそW95×D47×H21mm。
ケース裏側。
フタを開けるとTC66Cの本体が収まっている。
全部取り出してみたが取説など付属品は無し。
QRコードから探して読んでねっ てことらしい。
2 外観
液晶ディスプレイのある表側。
保護のため薄いビニルが貼られている。
裏側にはスイッチの位置を示す印字。
こちらにも保護ビニル。
側面には4つのスイッチ[K1 K2 PWR PD]が並ぶ。
詳しくは後述。
反対の側面にはUSB micro-B端子。
PCにデータ転送する時や、外部電源でTC66Cを使いたい場合に使用。
充電時に急速充電器のUSB Type-C端子に挿しこむ入力側。
※出力側にもできる
USB type-Cケーブルでスマートフォンなど機器をつなぐ出力側。
※入力側にもできる
3 分解
中身をちょっと覗いてみる。
M2mmの皿ビス×8本を外す。
中身はこんな感じ。
4 サイズ
本体はUSBメモリと間違えそうなほど小さい。
USB Type-C端子を含んだ長さ49mm×幅22mm×厚8mm。
重さは実測8.1g。
TC66C 使い方
このTC66Cの特徴の1つが “プロトコルトリガー” を備えていること。
「トリガーって何だっけ?」状態だったので少しお勉強。
1 プロトコルトリガーとは
充電器に対して偽装のプロトコル信号を出し、それと認識させる機能のこと。
充電器を騙すオトリという意味で「デコイ」とも呼ばれる。
このTC66Cには幾つかのプロトコルトリガーを備えている。
(QuickCharge2.0/3.0、 FCP/SCP、AFC、Power Delivery など)
例えばPowerDelivery(PD)トリガーの場合、非対応の機器をつないでも、TC66CからPDプロトコルを発信することで充電器にはPD対応だと識別させ、PD充電をさせることもできる、という仕組み。
ただ、偽の信号を出すということは、本来は対応していない機器に高負荷をかけることでもあるので、承知の上で実験しないと故障や発熱の恐れもあり危険。
なので、通常の充電時にはトリガースイッチはOFFにしておく。
また充電中や計測中にON/OFFを切り替えても反応はしない仕様で、一度TC66Cを抜いて挿し直す必要がる。
PDスイッチは、プロトコルの検出やプロトコルトリガーを実行したい場合ONにする。
トリガーのスイッチなのだから「TRG」とでも書いてくれればいいのに、PDと記されているから勘違いする。
ちなみにTC66Cを、トリガー(PD)スイッチOFFで充電器に挿すと画面は真っ暗で何も表示されない。
しかし2次側に充電対象(スマホなど)が接続されると表示がオンになる。
下の例では、電流値(1.17475A)と検出プロトコル(SAMSUNG)を表示。
2 インターフェイス
充電器にTC66Cを挿し込むとまず表示される画面の例。
充電器はRAVpowerのPC133。
写真⇧ PDトリガースイッチを「ON」にしてディスプレイを表示
3 各スイッチの役割
側面スイッチの種類とおもな役割を確認する。
K1とK2は プッシュ式スイッチ(押しボタン)、
PWRとPDは 横スライド式スイッチになっている。
- K1 1回押しでディスプレイ切替 または 設定モード中は項目&値変更
- K2 1回押しでディスプレイ切替 または 長押しで設定モード内アクセス
- PWR 外部電源からTC66Cへ給電したい場合はOFFにする
- PD 充電器に対してトリガー信号を送りたい場合にONにする
※PDはPullDown抵抗の略
4 ディスプレイ 切替え方法
ディスプレイ表示は全部で8画面。
上側面にある K1 K2 プッシュスイッチで、表示を切り替えられる。
ボタンはK1 K2どちらを押してもOK。
1回クリックするごとに次の画面に切り替わり、一巡すると元の画面に戻る。
押していたスイッチと別のスイッチをクリックすると、1つ前の画面に返る。
5 ディスプレイ 8画面
8画面あるディスプレイ表示例がこちら。
なお下記の 1.~4. までの4画面は表示内容が違うだけで、好みで選択。
5.~6. はシステム情報やセッティングに関わる画面で、必要時に選択。
1.急速充電プロトコル識別モード
⇒ 右下に識別されたプロトコル名を表示
USB Type-CのD+/D−ピン電圧(画面左下)で識別しているらしい。
2.計測値REC記録モード
⇒ micro-B経由でPCに転送可
下層ページあり。
K2スイッチを長押しするとRECメニュー画面に入る。
メニューに入ると◁マークが左下に現れる。
◁マークがRECにある時、K1スイッチをクリックすると記録が始まる。
もう一度クリックすると記録が終わる。
◁マークをCEに移動してK1スイッチをクリックするとデータを消去。
「00:00:00」は記録時間を「00%」は本体メモリーのストレージ容量を表示。
データの記録時間を1~60secの間で設定もできる。
3.累積電容量(mAh)表示モード
⇒ 左下に累積電気容量と電力を表示
対象をつなげば自動的に記録を開始しDETA0とDATA1 2つデータを記録できる。
K2スイッチ長押しでデータをリセット。
K1スイッチのクリックでDATA0、DATA1の記録を切り替える。
充電累積容量を見たい場合に便利な画面。
4.シンプル表示モード
⇒ 電圧・電流・電力だけを大きく表示
通常の充電管理やUSBケーブルチェックなどは、この表示で十分かも。
5.システム情報モード
⇒ シリアルNo、ファームウエアVol などを表示
6.セッティングモード
⇒ ディスプレイ輝度やBluetoothオンオフなど、9項目の設定をする。
K2スイッチ長押しで下層ページに入ると、各々の設定を変えることができる。
※下記の『 TC66Cの設定 』にて詳しく解説
7.プロトコルトリガー表示設定モード
⇒ 各プロトコルトリガーを調整
下層ページあり。
K2スイッチを長押しするとプロトコルトリガーの選択の画面に入る。
最初は最上段のQC2.0が赤色表示されている。
同じK2スイッチを1クリックするごとに次候補に移動する。
ここで一番下のPD(TypeC)を選んでみる。
PDが赤色選択された状態で、K1スイッチで決定。
すると「PLEASE REINSERT!」(挿しなおしてね)と表示される。
※PowerDelivery トリガーだけの操作
※下項目『TC66Cの設定』7.CCpin PULLDOWN と関連
ここで一旦、TC66Cを充電器から外す。
スグに充電器PDポートに挿し直すと[PD2.0プロトコル]調節画面に入れる。
たぶん1秒以内の一瞬のタイミングで。
上手く行かない時は再度プロトコルトリガー選択からやりなおす。
この画面に入ることができたら、K2スイッチで出力を選択する。
最初は一番上の「5.00V」が緑色で選択されている。
PD2.0電圧の選択肢は、5.00 9.00 12.00 15.00 20.00 の5つある。
K2スイッチを4回クリックして一番下の「20.00V」を選択してみると、実際に19.9196V が出力されていることがわかる。
今回のテストは非対応スマホへの給電なのでこのまま放置はちょっと心配。
動作確認だけにしてトリガー設定モードから退出、通常の充電に戻した。
8.充電器プロトコル検出モード
⇒ 充電器のもつ対応プロトコルを検出
下層ページあり。
K2スイッチ長押しで検出画面に入ると「DANGEROUS!!!」と注意される。
Type-Cポートに高負荷がかかるため2次側に機器を繋がない様に、という警告。
無視してK1スイッチでクリック決定。
上から順にチェックが始まる。
サポートされているプロトコルは、白から緑に色が変わる。
赤色に反転するプロトコルがあった場合はサポートされていないことになる。
写真⇩ 今回のPC133充電器の例では全て緑色になった
検出結果を確認したら、K2スイッチを1クリックして元の画面に戻る。
一周回ったので元の画面 (1.)に戻る。
6 TC66Cの設定
本体の各種設定をしていく。
K1またはK2スイッチを数回押して「SETTINGS」モードにする。
「SETTINGS」モードが画面に出たらK2スイッチを長押し。
すると各項目を選択できるページに移る。
1.BACK LIGHT DELAY
最初の項目[BackLight Delay]が▢枠で選択されている。
選択中にK1スイッチをクリックすることで設定を変えられる。
この項目ではディスプレイの消灯時間を1~9分まで変更可能。
0にすると自動消灯オフ(点きっぱなし)になる。
2.BACK LIGHT LEVEL
液晶の明るさを調節。
K1スイッチのクリックで設定。
0~9まで10段階に変更可能。
0でも真っ暗にはならない。
3.TEMPTURE SYNBOL
摂氏(℃)/華氏(℉) の表示を選択。
K1スイッチをクリックするごとに切り替わる。
4.USB CONNECT
USB micro-B端子の用途の設定。
K1スイッチのクリックで切り替える。
USB micro-B端子を PCとの通信ポートに使う場合、ONにする。
USB micro-B端子を TC66Cへの外部電源ポートにしたい場合、OFFにする。
5.Bluetooth
Bluetooth通信の使用を選択。
K1スイッチのクリックで切り替える。
スマートフォンとデータをリンクしたい場合はONにする。
後ほどBluetooth通信を試してみたいのでここは「ON」にしておく。
6.画面回転
ディスプレイの上下を反転できる。
K1スイッチを押すごとに反転する。
7.CC PIN PULLDOWN
プロトコルトリガーに関係するCCピンのプルダウン抵抗をON/OFFする。
K1スイッチのクリックで切り替える。
「CC1/CC2ピンの抵抗をプルダウンするか否かを選択…略…プロトコル検出やトリガーを実行したい場合はONにし、影響されない充電をする場合はOFFにする」
とのこと。(ムズイ…)
通常はONにしておけば良いらしい。
8.言語選択
表示言語の選択。
初期状態はEN(英語)。
K1スイッチを押して言語の種類を確かめてみたが、EN(英語)と中(中国語)の2択しかなかった。
9.デフォルト復元
全ての設定を初期状態に戻すことができる。
K2長押しでメニューに入りK1決定で工場出荷時にする。
ただしオフラインREC記録したデータは消えないとのこと。
手動で消す必要がある。
以上 9.デフォルト復元 が設定項目の最後。
全て終わったら、K2スイッチを長押しで元画面に戻す。
「SETTINGS」で設定できる内容は以上になる。
まとめ
TC66Cの基本的な機能と操作についてまとめてみた。
製品として、小さく良く作られている。
構造的に上面下面のプレートのみなので、横からのホコリや水分には注意。
ディスプレイ文字はカラフルで綺麗だけど、小さな数字は読みにくい。
画面がもっとギリギリまで大きいと良いのだけれど。
商品には取説が付属しておらずweb上も英語か中国語のみなので難解だった。
海外サイトも含め、あちこち調べまわってなんとか理解できた。
でも一度覚えて設定済ませれば使い方はカンタン。
今どきの電子機器の端子はType-Cが主流だしPD充電器を使うことも多い。
TC66CのようなUSB測定器を備えておけば、いろいろ便利だと思う。
次回は ファームウエア更新やBluetooth通信機能 を試してみる予定。